あと5年で死ぬとして

後腹膜平滑筋肉腫の外科治療後、肝臓に遠隔転移した33歳のつれづれ。

満腹

コロナワクチンの2回目を終えた。副反応はなかなかに辛くて、ほとんど出したことがない38度以上の熱が1日続いた。起きても眉間のあたりが重くぼーっとしてしまい、気がついたらまた眠っていて、赤ん坊や猫のように短い睡眠を繰り返した。巷で言われている重めの副反応そのもので、摂取から約34時間後、ふっと辛さから抜けた。もちろんそのあと辛さは残っていないのだが。明らかにまた食べられる量が減ってしまった。健常なときには食べ切っていた量の半分で、苦しいほど満腹になる。いつも注文する寿司は10巻たいらげていたが、6巻食べればその晩寝つけないほど苦しい。なかなか胃から先に進んでいないように思う。お腹が空かないわけではないのだが、一度に入る量が減った。

大したことないといえばそうなのだが、前回このような状態が続いて胃痛に我慢できなくなったときには、1日でも早く手術が必要と言われるほどに後腹膜腫瘍が膨れ上がっていたのだった。ほんの数日、夕飯の量が入らなくなっただけだが、これは健常の範囲なのだろうか。気にしなくていいかもしれないことも、腫瘍のせいだと勘繰ってしまう。胃痛も少しではあるが、感じる頻度が増えてきている。


昨日今日で、入江亜希の北北西に曇と行けという漫画を読んだ。アイスランドが舞台で、地球規模の大自然が素晴らしい絵とともに描かれている。アイスランドに行きたい。そして入江亜希の画力が欲しい。

1番したいことは気心の知れた現地の友人に運転してもらってドライブすることだが、残念ながら友人もいなければ英語すら話せず、免許もないうえ電車で酔えるほどに乗り物に弱い。歌もダンスもできないし、酒も飲めない、体力も力も注意力も度胸もない。…何も持ってないなあ。でも多少の絵心と料理ができるので、一緒に楽しむことはできる。と思っている。

この低い天井の狭い部屋で一生を終えてしまうのは、あまりにもったいないと思う。吹き抜ける風を、見渡す限りの視界を、遮るものが何もない場所。自分の力では明日も生きていけない環境。そこに立つ心許なさを、一度は経験するべきではないだろうか。


猫を肩に乗せて、澄んだ空気を吸えたらどんなに幸せだろう。あまりの幸せに、想像だけで涙が出てしまう。旅行は大好きだけれど、そこに猫がいないのは、すごく寂しい。5年しか生きられないのならどこか遠くへ行きたい気持ちもあるが、私の腕におさまってしまう命を思うと、できる限り長く、そばに感じていたい。